優れたマーケティングとは「徹底的に対価を回収する」ことだった『ドリルを売るには穴を売れ』佐藤義典

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ドリルを売るには穴を売れ

 「マーケティングってなんだか難しそう……」

あなたはスマートフォンをお持ちだろうか?フューチャーフォンでもいい。いずれにしてもその機種を「なぜ買ったのだろうか?」。

また、今日のお昼のことを思い出してほしい。何を食べただろうか?定食、パスタ、うどん、ラーメン、寿司、ハンバーガー、あるいはコンビニですませた方もいるだろう。では「なぜそのランチを選んだのだろうか?」

  それがマーケティングだ。難しくないし、とても身近である。


マーケティングは楽しい!

今、世の中で人気を博しているものに対して疑問をもつ。「なぜ選ばれているのか?」と。すると、マーケティングの裏にある企業の戦略が見えてくる。

たとえば無料通話アプリの「LINE」。世界で3億人、日本だけでも5,000万人の利用者数を誇る大ヒットアプリである(2013年11月時点)。日本での利用者数が5,000万人と聞くと少ないと思われるかもしれないが、そもそもスマートフォンの利用者数が5,000万の後半だ(2013年9月時点:MM総研)。つまりスマホユーザーのほとんどが利用しているということになる。ちなみにスマホでFacebookを利用している人は約5割、Twitterが4割程度である(2013年8月時点:Androidスマホ総研)。

ではなぜ、LINEはここまで利用者数を拡大することができたのか?理由はいくつかあるが、ひとつだけあげるとすれば「使い勝手が良い」ということだ。シンプルだがユーザーが求めている一番のポイントは「使いやすいかどうか」に集約される。「無料」「スタンプ」「電話帳の同期」などは他の無料通話アプリも同様である。だが同じ条件で圧倒的に使いやすかったためにLINEは勝者となったのだ。

もちろん、無料でここまでのサービスを提供するのには不安があろう。「もし収益化できなかったら……」。しかし当時のNHN Japan(現LINE株式会社)には確信があった。「人が集まるプラットフォームを構築すれば、収益化は必ずできる」と。そのようにして、LINEが行ったマーケティングの裏に「プラットフォーム戦略」が見えてくるのだ。Googleも、Amazonも、Yahoo!も、楽天も戦略としては同じである。

そう考えると、今をときめく大企業各社が基本的には同じ戦略で成長してきたと分かる。各社は「無料で優れたサービスを提供して人集めをしていた」のだ。まるで世界の仕組みに自分だけが気付いたかのような錯覚をおぼえるだろう。

これがマーケティングの楽しさである。

成長企業のマーケティング

『ドリルを売るには穴を売れ』には企業がとるべきマーケティングが記載されている。

1.一貫性のある戦略

優れた戦略をひとつだけ行っても企業は成長しない。

大切なのは「一貫した4つの戦略」を構築することだ。「4つの戦略」とは

  1. 顧客に取っての価値はなにか(ベネフィット)
  2. 顧客を分けて絞る(セグメンテーションとターゲティング)
  3. 競合よりも高い価値を提供する(差別化)
  4. 製品、価格、販路、広告(4P)

である。

これら4つの戦略を一貫性をもたせて流れるように構築するのだ。一言で表現すると「誰に、何を、どのように売るか」を追求することである。ただ愚直に、シンプルに。

2.「顧客にとっての」価値向上

マーケティングにおける優先順位の一位は「顧客にとっての価値」である。

顧客にとっての価値が、顧客が支払う代償(購入費用、時間、手間)に比べて高ければ商品は売れる。サービスは利用される。ただ無料なだけでなく、ダウンロードは簡単、使い勝手も良い、ストレスフリーのコミュニケーション。だからLINEは普及した。

もしLINEが有料だったらどうだろうか?Twitterでつぶやくのに手間がかかったら?Facebookの投稿に多大な時間が必要なら?誰も使わない。

そしてつねに価値の向上がなされなければ、ユーザーは離れていく。

3.対価を受けとる仕組み

ディズニーランドの優れている点は「徹底的な対価の回収」にある。

そう言われると驚くかもしれないが、事実である。ディズニーランドの収益構造は「チケット」「物販」「飲食店」の三本柱だ。これらがバランス良く機能しているために、安定した経営ができる。

大切なのは「収益がなければ企業はまわらない」ということだ。ディズニーランドはなにも守銭奴ではない。顧客に夢を与えるために、健全な経営を継続的に行う必要があるだけだ。だから徹底して対価の回収をはかる。

もしディズニーランドが、1,000円で入場できる代わりに、ゴミだらけだったらどうだろうか?コンビニが併設されている代わりに、マナーの悪い客であふれたらどうだろうか?ふなっしーよろしく薄汚れたミッキーやミニーを見て、また来たいと思うカップルはいるだろうか?

優れたマーケティングは、つねに「win-win」なのである。

ヒトコトまとめ

成長する企業のマーケティングは

一貫性のある戦略を構築し、提供する価値を高め、徹底的に対価を回収する、こと。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

序章 “マーケティング脳”を鍛える/第1章 あなたは何を売っているのか?-ベネフィット/第2章 誰があなたの商品を買ってくれるのか?-セグメンテーションとターゲット/第3章 あなたの商品でなければならない理由をつくる-差別化/第4章 どのように価値を届けるか?-4P/第5章 強い戦略は美しい

<著者>

佐藤義典(サトウヨシノリ)
早稲田大学政治経済学部卒業。NTTで営業やマーケティングを経験後、米ペンシルベニア大にてMBAを取得。その後、外資系メーカーにてマーケティング、営業、開発、製造などを統括。外資系マーケティングエージェンシーでは、営業チームのヘッドやコンサルティングチームのヘッドなどを歴任。現在は「戦略と戦術を結ぶ」ことを理念とする経営コンサルティング会社、ストラテジー&タクティクス株式会社の代表取締役社長として活躍中。無料マーケティングメルマガ、「売れたま!」の発行者としても知られる。大手新聞社、財閥系不動産会社、高級化粧品メーカー、大手航空会社などさまざまな業種のマーケティング戦略、戦術のコンサルティング実績がある。

<類書>

ドリルを売るには穴を売れ

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