スタートアップを成功に導くマニュアルとは『アントレプレナーの教科書』スティーブン・G.ブランク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アントレプレナーの教科書

  現在の輝かしい地位を捨ててスタートアップに挑戦したい思っている人は多い。その理由はなんだろうか。自由?報酬?夢や希望?

少なくともそこには「想像上のビジョン」がなければならない。想像上のビジョンとは「叶えたい願望」と言い換えても良い。その実現可能性が高ければ高いほど、スタートアップが成功する確率も高まる。

「ビジョンもある。叶えたい願望も明確だ。実現可能性だってそこそこ高い。だから組織をつくっても良いだろう?」

  よかろう。ただ、近いうちに撤退することになるだろうから、家具の売却先を今から探しておくといい。


大企業にあってスタートアップにないもの

大企業にあってスタートアップにないものはなんだろか。「資金?」その通りだ。「人材?」数という意味においてはそうだ。「製品?」それもある。しかし、資金がなくても人材がいなくても、そして製品がまだなくても、起業できる時代になった。だからあなたはスタートアップに挑戦するのだろう?

実は大企業にあってスタートアップにないものは他にもある。それは「マニュアル」だ。大企業においては、一定の成功可能性があり、なおかつそれを実現するためのマニュアルがあるのだ。そのため、生半可なことで屋台骨が揺らぐことはない。

しかし、スタートアップにはそれがない。だからこそ創業者やリーダーの手腕がそのまま業績へとつながる。成功したら「創業者がスゴいんだ」と、こうなる。無理もない。

  でも、……本当に?本当にそうなのだろうか?

組織を構築するまえに行うべき3つのこと

創業者が優秀であるということは、まあ、そういうことにしよう。運も実力のうちである。

ただマニュアルが無いというのは誤解だ。すでに、数々のスタートアップにおける成功と失敗から構築された「方法論」としての「体系的な」マニュアルは存在しているのだ。

それが『アントレプレナーの教科書』である。本書には、組織を構築する前に行うべき3つのフローが記されている。

1.顧客発見

顧客発見とは

誰が自社製品の顧客であるかを発見し、自社が解決できると信じている課題が顧客にとって重要なものであるかどうかを明らかにする

ことである。つまり、ビジョンによって構築したビジネスプラン、あるいは仮説が正しいかどうかを確かめることだ。

ここでは「社内における推測」をするのでなく「外に出て」顧客の課題、その課題を解決できる製品、購入判断に影響するキーパーソン、そして実際に製品を使うユーザーについて学ぶ。

重要なのは、この行程が「製品を開発すること」を目的としていないということだ。顧客発見とは、あくまでも「自社のビジョンにあった顧客と市場が存在するかどうかを確かめること」が目的である。

多くの市民に幅広く支持される製品は、すでに大手が手がけている(あるいはこれから作る)。そういった製品をつくることが顧客発見の目的ではない。

本質を見失わないようにしてほしい。

2.顧客実証

顧客実証とは

くり返し実行可能な「営業ロードマップ」を構築するために、実際に顧客に購入してもらう

ことである。それにより、自社製品にお金を払う顧客がいることを証明する。そして同時にビジネスが反復可能であることも。

顧客発見では顧客と市場が存在するかどうかを確かめた。顧客実証では、実際に営業をかけて購入してもらい、仮説が正しいことを実証するのだ。

もちろん、うまくいかなければ営業プロセスだけでなく顧客モデルにまでさかのぼって仮説を洗練させる必要がある。仮説がいつも正しいとは限らない。インタビュイーがウソをついているかもしれないし、調査方法を間違えているかもしれない。

だからこそ実証が必要なのだ。

3.顧客開拓

顧客開拓とは

エンドユーザーの需要を開拓し、その需要を自社の営業チャネルに結びつける

ことである。

このときに重要なのが、自社の「ポジショニング」と所属する「市場タイプ」を正確に把握することだ。自分たちの取り巻く環境をしっかりと理解したうえで、戦略を策定する。

「なぜ自社の環境を把握する必要があるのか?すでに顧客はいるではないか」

ポジショニングと市場タイプの把握の仕方は本書にゆずるが、たとえば北海道で開店したカフェが大々的にネット広告をうっても、費用対効果はひどいものになるだろう。また、スマートフォンのアプリをチラシで宣伝しても、ダウンロード数は期待できない。

つまりはそういうことだ。

これら3つのフローを得た後にはじめて組織を構築する。いわゆる「営業」「マーケティング」「事業開発」をともなった「企業組織」への移行だ。

ヒトコトまとめ

  スタートアップを成功させるための秘訣は

顧客からの学習と発見を繰り返し、自社を取り巻く環境を注視しながら、必要に応じて微調整し続けること。

お付き合いありがとうございました。多謝。

目次

序章 勝者と敗者

第1章 大失敗への道:製品開発モデル

・製品開発ダイアグラム
・このやり方のどこが悪いのか?
・では、代替案は何か?

第2章 確信への道:顧客開発モデル

・確信への4つのステップ
・スタートアップの4つの市場タイプ
・製品開発と顧客開発を同期させる
・まとめ:顧客開発プロセス

第3章 顧客発見

・顧客発見とは何か
・顧客発見プロセスの概要
・第0フェーズ:合意を得る
・第1フェース:仮説の記述
・第2フェース:仮説の検証と洗練
・第3フェース:製品コンセプトの検証と洗練
・第4フェース:確認

第4章 顧客実証

・顧客実証とは何か
・顧客実証プロセスの概要
・第1フェーズ:販売の準備
・第2フェーズ:エバンジェリストユーザーへの販売
・第3フェーズ:企業と製品のポジショニング
・第4フェース:確認

第5章 顧客開拓

・顧客開拓とは何か
・顧客開拓プロセスの概要
・第1フェーズ:市場投入の準備
・第2フェーズ;企業と製品のポジショニング
・第3フェーズ:企業の市場参入/製品の市場投入
・第4フェーズ:需要開拓

第6章 組織構築

・組織構築とは何か
・メインストリーム顧客基盤の構築
・企業内の組織と管理体制の確立
・即応性の高い部門の構築
・第1フェーズ:メインストリーム顧客基礎の構築
・第2フェーズ:経営と企業文化の課題
・第3フェーズ:機能別部門への移行
・第4フェーズ:即応性の高い部門への構築

付録A 顧客開発部隊

・前提:従来型部門の不要論
・役職は重要だ
・顧客開発部隊と製品開発部隊の組成

付録B 顧客開発チェックリスト

類書

スタートアップ・マニュアル ベンチャー創業から大企業の新事業立ち上げまで

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

アントレプレナーの教科書

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です