文体を意識することが、読まれる文章へと進化する秘訣。先日の記事では、イケダハヤト氏の主張と『10年つかえるSEOの基本』 の内容を比較しつつ、文体について考えてみました。
ただ、「だから結局、文体ってなんなんだよ」と思っている方もいるでしょう。そこで今回は、文体について、わかりやすい例を用いながら、さらに掘り下げてみたいと思います。
たとえるなら、そう、一般的な美人と有村架純との違いです。
文体に関する議論は“基本の外”にある
ボクはフリーのライターをしていることもあって、つねに、文章の勉強をしています。文体だけでなく、文章に関する書籍はおおむねチェックしていますし、購入もしています。
たとえば、さいきん読んだ文章に関する書籍には、次のようなものがあります。
『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』
『削るほど良くなる文章の練習帳: すっきり! シャープ!いい文章が書ける』
『超ベーシック すぐうまくなる書くチカラ91 (TWJ books)』
ただ、どの書籍においても、書かれている内容(趣旨)はそれほど変わりません。「一文一意」「ムダを削る」「主語と述語を近づける」など、文章の基本は同じなのです。
考えてみれば、とうぜんのことですよね。だって基本なんですから。スポーツでも、仕事でも、文章でも、基本となる要点は同じはずです。そこで、“文体の違い”が語られるはずもありません。
有村架純はなぜ人気なのか
芸能に関してはまったくうといボクですが、有村架純は知っています。さまざまな商品やサービスの広告塔になっていますから。みていませんが、『映画 ビリギャル』 で主演もつとめていますよね。
さて、そんな有村架純が人気な理由をボクなりに分析してみると、「一般的な美人とは違う」ということ。ふつうの美人はどこにでもいるんですよ。でも、彼女はちょっと違う。
どこが違うかというと、「本当に美人なのかどうか確かめたくなる魅力」があるんです。「あやうさ」とか「もろさ」と言ってもいいかもしれません。そのせいで、何度も見たくなる。
支持される文体(文章)と有村架純の共通点
支持される文体についても、同様のことが言えるのではないでしょうか。つまり、基本(一定レベルの可愛さ)をおさえつつ、そこから逸脱するような何か(「あやうさ」や「もろさ」などの魅力)を持ち合わせている。
「隙がある」というと、ちょっと言い過ぎかもしれませんね。論理は破綻していないけど、飛躍しているような気がして、もっと読みたくなる、というようなニュアンスでしょうか。
一般常識とは異なる主張を展開して、あとから論理的な整合性をもたせていく。演繹法と帰納法を組み合わせるようにして、つじつまを合わせていく。そんな文体のブロガー、いますよね。
「嫌いは無関心より好きに近い」
あいまいですね。すみません。じゃあこういうのはどうでしょう。「ファンもいるけどアンチもいる。それが人気の秘訣」。前田敦子や剛力彩芽を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。
とくに、嫌いから好きへと移行すると、感情はより強まる気がします。逆もまたしかりですよね。あたかも、価値が高まったかのように錯覚するんですよ。同じものでも。
「何言ってんだこいつ」からスタートして、「その理由はコレとコレとコレ。ね、そうでしょ? あなたにもできますよ」と帰結する。「な~るへそ。ボクにもできるかもしんない!」。否定から肯定への転化、ファンの完成です。
もちろん、新垣結衣のように、ストレートな美貌(文体)で勝負できる人もいますけどね。そういう人は、文学の世界で名を馳せられるだけの資質がある稀有な人だと思います。
『影響力の武器』 と消えた一発屋
まとめます。そもそも人は、自分の考えを否定されたくないし、曲げたくないと思っています。でも、どこかで現状に対する不満や、成長への願望もあったりする。そこに葛藤が生じます。
そのうえで、自分ができていないことをできている人があらわれた場合、あるいは単純に賛同できない場合、まず、反発します。「そんなこと不可能でしょ!」「そんなこと言ってると嫌われるよ!」「なにこいつ、全然かわいくないじゃん」、と。
それで消えてしまえばなにも残りません。でも、くり返しくり返し主張して、露出して、単純接触効果も相まって嫌いが好きになる。否定が肯定へと変わる。魂の錬金術です。
あとは『影響力の武器』ですよね。「返報性」や「権威」、「社会的な証明」、あるいは日本人的な「多数票の強み」「烏合の原理」などによって、雪だるま式にファンが増えていく。
だからこそ、イケダハヤト氏は「量」が重要だと主張しているんですね。一発屋がやがて消えてしまう理由も、そのあたりにありそうです。
(おまけ)文体に関する本
ところで、文体に関する本を検索したら、以下の書籍がヒットしました。読んでみて、さらなる文体論を考察したいと思います。
フィルムアート社
売り上げランキング: 7,955
岩波書店
売り上げランキング: 1,336