夢。なんともいい響きです。そこには、これまで追い求めてきた何かがありそうな、そんな予感があります。しかしその像はボンヤリとしていて、容易につかむことはできません。
世の中には、そんな夢を実際に叶えてしまう人たちがいます。「夢は夢のままだからいい」ということを意に介さず、夢を実現してしまう人。彼らはどうやって夢を叶えているのか。
本書、『夢の叶え方を知っていますか? 』には、その答えが書いてあります。とくに、感情論ではなく、論理的に夢を実現したい人のための、具体的な方法が書かれているのです。
森博嗣氏が教える夢を叶えるための具体的な方法
スカイ・クロラシリーズで有名な森博嗣氏は、本書、『夢の叶え方を知っていますか? 』にて、夢を叶えるための具体的な方法について述べています。
とても論理的に説明されているので、思わず納得してしまう話ばかりです。
没頭できないのは“夢ではない”証拠
助教授になって五年ほどしたときだった。ここにきてようやくストレスを感じるようになたっといえる。そこで、再び自分が何をしたかったのかを思い出した。そういったことを考えるというのが、既に没頭していない証拠だったかもしれない。
夢に向かっているとき。人は、その対象に“没頭”しているはず。そうでないと感じたとき、自分の仕事や生活を改める必要があるのです。
夢を実現させるために必要な二つの条件
大事なことは二つある。いずれも、夢を実現させた人に共通することだ。
一つは、自分の夢を知っていること。
(中略)二つめには、それをなるべく早く実行することである。
自分の夢を知り、実行する。そのシンプルな二つのことだけが、夢の実現に必要不可欠なのです。
他者が介入する夢は本当の夢ではない
自分の夢なのに実は他者との関係が入り込み、むしろそちらが主になっているのだ。自分が楽しめば良い、と述べた趣味的な夢でさえも、思い描いているビジョンには、他者から受ける評価を期待している、褒められて喜ぶ自分がいる。
夢には「職業的な夢」と「趣味的な夢」があるとのこと。職業的な夢の場合、他者との競争や他者の介在が欠かせない。そこで苦悩が生じてしまう。
多くの日本人が陥りがちな間違いは、「自己満足ではいけない」→「みんなで満足しなければならない」という発想であり、ここには、既に指摘したように、「他力満足」に加えて、自己満足の「他者への押しつけ」が表れる恐れがある。偶然にも、周囲の他者が同調あるいは協力してくれる場合に限って、夢が実現するけれど、そうでないときには、夢半ばで挫折することになるだろう。
本来的な意味における「夢」とは何か
・夢というのは、自分の自由の追求である。
・夢は本来、自己満足である。
・自分の自由とは、自分が自分の行為に満足することなのである。
夢とは自分なりの自由を追求すること。それは究極の“自己満足”といっていい。そこに、他者は介在しないのです。
他者(外部)から与えられる快楽は慢性化する
周囲の人たちと合わせるためにやっていることはないだろうか。一緒に飲みにいくとか、友達と同じゲームをするとか、常に仲間とつながっていることを確認し合うとか、みんなが持っているものを手に入れ、みんなが食べているものを食べにいくとか、それらの一つ一つは、けっして悪いものではない。だが、そんな細かいゴミが、あなたの中に溜まってしまい、身動きができなくなっているのではないか。
夢というものは、外からやってくるものではなく、自分の中から生まれる。
生来の悦楽は、自身の内部から沸き起こってくるものであり、外部から与えられるものではない。仲間と一緒に騒いでいるときの一時的な快楽ではない。酒や麻薬類などの外的な刺激による快楽でもない。そういったものは、その場をすぎればあっさりと消えてしまい、逆に孤独感を伴う反動がある。自分の中から自然に生じる楽しさ、喜びは、長く持続し、いつでも、ふと思い出すだけで幸せになる。
夢を実現させるための工夫
・目標を常に意識し、必要であれば進路を常に修正する
・自分をコントロールする
・体調を管理する
・余裕のあるスケジュールを組む
・自分のペースで進める
・キリが悪いところで終える
・明日の自分のために準備をする
・調子が良いときも、悪いときも、同じように進める
・進捗を数字で表す
自分をだましつつ、計画をきちんと立てて、実行していく。それだけが、夢を実現するために必要なことのようです。
「作家になりたい」を実現するために
最後に、「作家になるためには」というテーマで、ポイントをピックアップしてみました。小説家・森博嗣氏の姿勢が垣間見えます。
・書きたいと思ったら、翌日には書くこと
・準備が必要だと感じたら、どんな準備をどこまでするのか、それに何日かけるのか、という計画をもつこと
・とにかく書き始める
・書き上げたらすぐに次作を書く
・難しい場所にぶつかったら、そこでストップせず、ひとまず棚上げして、次へ進む
・厭きないためは、複数のことを同時に進める
・できるだけ良い道具を使う
・「上手であること」「完成度の高さ」よりも、「オリジナリティ」を
→外からのインプットを断ち切る。人の作品に触れないようにする
まとめ
どれほど強く「夢を実現したい」と願っていても、その夢が具体的なものでなかったり、あるいは他者の介在を必要としているのであれば、実現しない可能性が高いでしょう。
夢は本来、自分の中から生まれ、自分ひとりで完結できるもののようです。そして、実現のためにできることは、計画的に、コツコツと、ただ、一歩一歩、進めていくことなのです。
目次
【まえがき】
・子供の頃からの夢
・夢のための試行
・手段を考える
・夢を発展させる
・夢と自由は同じもの など
【第1章】 憧れの人生 憧れの生活
・夢は持たなくてはいけないもの?
・自分の夢なのに、他者が介入する
・夢は本来自己満足である
・夢への時間スパン
・夢実現の方法論 など
【第2章】 抽象的な夢と具体的な夢
・若者が語る野望
・年配者が語る謙虚
・もう遅いという諦め
・時間スパンの長い夢
・夢を実現させる確率 など
【第3章】 夢の価値
・ワンシーンの夢
・夢を実現するプログラム
・夢は自身の発見である
・観測と思考が導く
・自身の変化を知る など
【第4章】 夢を実現させるためには
・目標を固定する必要はない
・できないのではなく、時間がかかるだけ
・厭きないように工夫する
・敏感であること
・「自分史上初」を重ねる など
【第5章】 周囲を気にしない夢
・小さな成功が障害となる
・人から評価されたい夢
・自分を高めること
・自分の評価眼を持つ
・他者を気にしすぎる傾向 など
【第6章】 夢の楽しさを教えよう
・インプットだけでは退屈
・リンクが面白い
・自身から生まれる楽しさ
・きっと見つけられる
・楽しければ優しくなれる など
【第7章】 作る夢のすすめ
・オリジナルの価値
・自作を商品にするには
・憧れの田舎生活
・「好きなこと」というジャンル
・余計な贅沢をしない
・山あり谷ありは当たり前 など
著者
森 博嗣
1957年12月7日愛知県生まれ。作家。工学博士。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年に『すべてがFになる』(講談社ノベルス)で第1回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビュー。