アートディレクター佐野研二郎氏を批判するヤカラは法的な弱者である

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10アートディレクター佐野研二郎氏を批判するヤカラは法的な弱者である

 アートディレクター佐野研二郎氏が話題となっています。いわゆる、2020年の東京オリンピック用ロゴにおける「パクリ問題」です。ベルギーのデザイナーが著作権侵害だと裁判所に訴えているわけですが、このニュースを聞いて単純に「佐野氏ってひどい仕事するなあ」と考えてしまったり、あるいはネットで叩く人は、法律に関する知識がないと自ら宣言しているようなものです。そして、少なくとも日本は法治国家なわけです。


 

【アートディレクター視点から考える佐野氏問題のバカバカしさ】

 最初に、佐野氏のプロフィールを見てみましょう。以下のとおりです。

佐野 研二郎

1972年7月29日生まれ(43歳)。代々木ゼミナール造形学校、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、博報堂入社。大貫卓也が在籍したグループを経て、佐藤可士和チームに所属。博報堂/HAKUHODO DESIGN経て、2008年1月11日に「MR_DESIGN」を設立し独立。2014年4月に多摩美術大学美術学部総合デザイン学科教授に就任。

2014年、川村元気との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬのものがたり』が、NHKにて『ふうせんいぬティニー』としてテレビシリーズアニメ化される。同年、フジテレビ『武器はテレビ。SMAP×FNS 27時間テレビ』のポスターを手掛ける。東京アートディレクターズクラブ (東京ADC)・日本グラフィックデザイナー協会 (JAGDA) 会員・毎日デザイン賞審査員。

父親は内科医、兄はキャリア官僚、MR_DESIGN広報も務める妻は博報堂時代の同僚。

Wikipedia

 日光江戸村の『ニャンまげ』を手がけていることは有名です。次に、アートディレクターという職業について見ていきましょう。

アートディレクター(Art Director)とは、美術表現、芸術表現をもちいた総合演出を手がける職務を意味する。 商業活動のなかでは、広告、宣伝、グラフィックデザイン、装幀などにおいて、主に視覚的表現手段を計画し、総括、監督する職務である。 顧客の依頼・要望あるいは、立案された計画を目的達成するための素材や表現方法を模索し決定する。 例えば、写真の風合いや対象、文字の書体や位置、色彩の組み合わせなどを考察する。

Wikipedia

 今回の件において、アートディレクターやデザイナーの方々は「バカバカしい」と思われているのではないでしょうか。なぜなら、世界中に無数に存在する美術表現や芸術表現は、それぞれに、似通っているものがあるのは至極当然のこと、だからです。

 たとえば、ネット上に存在しているフリー素材を使ったことがないデザイナーはいないでしょう。いたとしたら、きっと活躍していないはずです。すべてのデザインをイチから考案していれば、制作に時間がかかって仕方がない。しかも質は担保されないことが多いからです。

【法律的に考える佐野氏問題の違法性】

 さて、本題の法律的な観点から考えてみましょう。最初の論点としては、「商標権」「著作権」についてです。

<前提>

模倣がすべて違法ではない。「商標権侵害」「著作権侵害」など、違法とされる模倣があってはじめて違法

<商標権とは>

商標権(トレードマーク、ロゴ、ブランドネームなどが代表的)
国や地域ごとに登録するもの(商標登録)。登録することで、模倣があった場合に商標権侵害と訴えることができる。あくまでも登録が前提。

→今回、ベルギーのロゴは商標登録されていない。(そもそも商標権侵害の裁判はおこされていないので、今回の場合は当てはまらない

<著作権とは>

著作権(音楽、映像、その他作品などが代表的)
他人の著作物を模倣すると著作権侵害となる。全世界どこでも使える。ただし、著作権侵害が成立するには3つの条件を満たす必要がある

※著作権侵害が成立するための3つの条件

①著作物であること(独創的、デザインとしての複雑性がある etc)
②類似していること
③模倣していること(見たことがある)

→原告側(今回はベルギーのデザイナー)は、これら3点を主張・立証しなければならない。

争点1.著作物であると認められるか?

 難しいと判断される単純なマークは商標権で守ることが前提なので、著作物と認められるかどうかは微妙。なぜなら、全世界において無条件に保護するとされる著作権が、ロゴなどの単純なマークにも認められてしまえば、世の中は使えないマークばかりになってしまうから。そこで、シンプルマークなどは登録という手続きが必要な商標権で守ることが基本とされている。

争点2.類似していると認められるか?

 佐野氏側は否定している(「類似していない」と主張)。争点1の解説にもあるとおり、もともとシンプルなマークは著作物であると認められにくい。そうした観点から、類似性も同様に認められにくい。一般的な考え方としては、類似性のハードルを上げる傾向にあるのが実態。いわゆる「酷似している」と判断されない限り、著作権侵害となる類似性は認められないのが世界の通説。

争点3.模倣していると認められるか?

 佐野氏側は否定している(「見たことがない」と主張)。

 総合的に判断して、著作権侵害と認められる可能性は低い。もし、違法となる懸念点があるとしたら、「ホームタウンディシジョン」。つまり、今回はベルギーで裁判をおこされているので、地元びいきの判決を下される可能性がある。また、現地の代理人とのコミュニケーション不和や、訴訟戦略のミスなども考えられる。

 このように、佐野氏の作品は、少なくとも違法とはなりにくいと考えられるわけです。それなのに、佐野氏の人格までも掘り下げるような批判がなされている実態は、とても悲しいこと。世界で認められるプロフェッショナルの仕事が不本意な中傷の的になっていること、および法的な無知によって見当違いの批判をしてしまっている人がいることは、遺憾としか言いようがありません。

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