なぜ「情けは人のためならず」なのか? 『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ

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影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

「情けは人のためにならないからやめたほうが良い」という意味ではない。自分のためになるからどんどん情けをかけるべきだ、という意味。

なぜ自分のためになるのかは、本書の第2章にある『返報性の法則』が答えてくれる。


返報性の法則とは

返報性の法則とは

他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、似たような形でそのお返しせずにはいられない

というもの。いわゆる「ギブアンドテイク」である。

いちいち例をあげて説明しないが、恩を受けたという感情は強力なもので放っておくと負担となる。やがては非常に不快なものとなり、社会から(端的に相手方から)の悪評価を受けるのではと心配にもなる。だから「返すべき」ではなく、「返さずにはいられなくなる」のだ。

返報性の法則を活用する

おおむね次のような活用方法が考えられる。

1.先に与える

無料の試供品、プレゼント、試食コーナーなどは返報性の法則を利用している。ただ実験によると、「購入してくれたら◯◯をプレゼントする」というよりも「プレゼントしてから購入してもらう」方が成功確率は上がるそうだ。

たとえば、「アンケートに答えてくれたら粗品を差し上げます」というDMよりも、「こちらはささやかなプレゼントです。よろしければ付属のアンケートにお答えください」の方がアンケート回収できるということ。大切なのは先に与えることである。

2.拒否を想定して譲歩を引き出す

大きな要求が拒否された後、小さな要求をすると承諾されやすい。これは、こちらが先に譲歩することによって、相手の譲歩を引き出しているのだ。形は違うがこれも返報性の法則の一種である。

この仕組みを理解しておけば、あらかじめ本当に要求したいことよりもハードルの高い要求を用意しておいて、譲歩を引き出すことが可能だ。しかも譲歩して承諾した場合には、相手方に責任と満足度がともなう(理由は本書を読んでほしい)。ただ、あまりに大きすぎるお願いをしてしまうと効果はない。要求全体がうさんくさくなるからだ。

3.サプライズで心の準備をさせない

サプライズは相手を混乱させ、冷静な判断をできなくする。要求は、サプライズによって承諾される可能性が高まるのだ。たとえ相手から勝手にされたことでも(一方的なものであっても)効果は変わらない。

よくよく考えてみると恐ろしいことであるが、予期せぬプレゼントによってコントロールされてしまう可能性があるということだ。恋人へのただのプレゼントならまだ良いが、プロポーズの場合は注意したい。結婚には「契約」という一面もあるのだ。

ヒトコトまとめ

返報性の法則とは

“先手必勝”の施しによって相手をコントローすること、である。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

第1章 影響力の武器
第2章 返報性――昔からある「ギブ・アンド・テーク」だが……
第3章 コミットメントと一貫性――心に住む小鬼
第4章 社会的証明――真実は私たちに
第5章 好意――優しい泥棒
第6章 権威――導かれる服従
第7章 希少性――わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力――自動化された時代の原始的な承諾

<著者>

ロバート・B・チャルディーニ
米国を代表する社会心理学者の一人。現在、アリゾナ州立大学教授。社会的影響過程、援助行動、社会的規範などに関する数多くの業績で学界をリードしている。

<類書>

影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
N.J.ゴールドスタイン S.J.マーティン R.B.チャルディーニ
誠信書房
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